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古さを感じさせない「恍惚の人」

更新をさぼり始めると、あっという間にブロクが休暇状態になってしまいます。怠け者の私としては、毎日ブログを更新なさっている方々には本当に頭が下がります。

私は目下、6月発売予定の「認知症」の本を抱えて、執筆に没頭していると、書ければいいのですが、気ばかり焦って、あまり進んでいないのが現状です。

そんな中、電車の中等で、かつて大ベストセラーになった有吉佐和子さんの「恍惚の人」を約40年ぶりに読み返しました。(この作品が発表されたのは昭和47年6月です)。その昔読んだときはまだ学生で、え、こんな人がいるんだと、一気に読んだ記憶がありますが、今回は少しずつ読んだので、結構時間がかかりました。

読み終わって感じたことは、古さを感じないこと。確かに、福祉サービスや医療の対応、そして薬のこと等など、細かいところは、いろいろと変わっていますが、40年たった今でも、身近なところに昭子さんや茂造さん(この小説の主人公)のような人たちがいるような気がしました。10年後に発刊となった文庫本の解説で、社会学者の森先生が「…10年ぶりに本書を読み返した。そして、まず強く感じたのは、内容的にはちっとも古くなっていないということである。痴呆の老人をめぐる問題はそのころより社会的な深刻さを増しているといってもよい。その意味で、本書は、ますます今日性を深めているといえよう…」と書いていらっしゃいますが、それから約30年後の今、この解説も古くなっていないと思います。

それにしても、有吉先生はこの本を執筆されるにあたって、何年も前から取材をなさったのだと思いますが、そう考えると、高齢者の問題は、半世紀近く、いえいえ、それ以上変わってないのですね。それにしても、この本を読んでいると、これまでにいろいろと出版されている認知症の解説書(かつては痴呆)よりも、症状に関してとてもわかりやすい部分が多いなあと感心せざるおえません。一口に認知症、アルツハイマー等などと言っても、個人差がかなりありますが、代表的な症状が、茂造さんを通して、とてもよく伝わってきます。以前読んだときは、え~!え~!の連続でしたが、認知症に関して少々の知識を得ている今回は、ハイハイ!ハイハイ!という感じでした。

そして、又時間ができたら読み直してみたいなと思ったのですが、それは、この作品に愛(人間愛・母性愛等など)を感じたから…やっぱり、認知症に介護に一番必要なのはそれぞれの立場での愛かな…(と書いて、「アラ恥ずかしい」とも思いますが)。この作品の昭子さん、素晴らしい愛情の持ち主なとつくづく思ったりもしました。

それと、現実問題として、お嫁さん(あるいは子ども、配偶者)一人では、認知症の家族を最初から最後まで介護するのは基本的に無理なのですが…この作品がすごいなあと思ったもうひとつに、昭子さんの介護の仕方があります。昭子さんは、この時代に、今のデイサービスのようなところに茂造さんを預けたり、離れの家を貸した若夫婦の奥さんに介護の協力をしてもらったり、ホームの入所を検討したりしているのです。何から何まで一人で抱え込まない、そういう介護方法があるということを、あんに示している点もすごいなあと思ってしまいました。

 

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